スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションが素晴らしいと言われるのは、ジョークを交えたトークもあるが、スライドのシンプルさにも注目したい。印象に残るキーフレーズのみを表示させ、余計なものは取り払う。固有名詞や専門用語以外の箇条書きは登場しない。場面転換のエフェクト(トランジションエフェクト)は、効果的な場面以外使っていない。パワーポイントで作成された画面いっぱいに文字があって読めないスライド、やたらと文字が上から降ってくるスライド、トランジションを多用したスライドなどとは大違い。落ち着きのないスライドは、スライドに気を取られ、集中力を欠く結果となる。言いたいことがたくさんあると、ついついスライドにたくさんのことを載せてしまいがちになるが、限られた時間の中で、一番伝えたいことに向かって、どれほどストレートにスピーチを考え、シンプルなスライドにするかが重要である。
ところで、世間では、プレゼンテーションのスライド作成を、パワーポイントからアップルのKeynoteに移行する人が多いが、Keynoteに替えるだけでスティーブ・ジョブズのようなプレゼンテーション資料になるのかといえば、もちろんそうではない。機能としては、Keynoteの方が表現力が高い。しかし、作業画面は非常にシンプル。機能がたくさんあるぞと言わんばかりのパワーポイントは、余計なことに気を使ってしまい、パワーポイントを使ってプレゼンテーション資料を作ろうという本末転倒なことを引き起こしてしまうのである。
昔のOHPシートをプレゼンテーションのスライドに使っていた時代を思い出すといい。決してスライドの作成が第一ではない。スピーチの原稿が先に作られ、補助的にスライドを用意する。伝えたい内容がより効果的になるスライドの作成に労力を費やさなければならない。
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