世界には、いろいろな言語と文字があります。
大雑把にみると、世界の言語で使っている文字は、ラテン文字・キリル文字・アラビア文字がメジャーなところ。人口が多いということでは、漢字の使用率も高いのはもちろんです。
言語と文字は一対ではなく、モンゴルのように縦書きしかできないモンゴル文字から、ロシアで使っているキリル文字に替えた国もあります。モンゴル語の文法は日本語に近いものなので、日本語をローマ字で書いているようなものです。
旧ソ連の国では、独自の文字からソ連時代にキリル文字になって、ソ連崩壊後にラテン文字へ変わったり、西アジアでは、脱イスラムや識字率の向上のためにラテン文字を導入する例もあります。
東アジアは中国の漢字の影響を受けた国が、朝鮮やベトナム、日本とありますが、朝鮮はハングル、ベトナムはローマ字(ラテン文字)、日本はかな漢字混在となりました。
コンピュータが使われるようになったのは、歴史で見ればかなり近年の出来事。アメリカ発祥なので、英語のラテン文字を入力しやすいのは当然かもしれませんが、複雑な文字入力を必要としない英語だったのは、偶然なのか必然なのか。ラテン文字を使うヨーロッパの国でも、アルファベットに記号をつけて表記するフランス語やドイツ語などがあります。ちょっとだけ手間が必要です。
もし、コンピュータが生まれたのがロシア(または旧ソ連)だったら、キリル文字が入力できるキーボードを使って発展していったことでしょう。そして欠かせないのはソフトウェアを作るときのプログラム言語もキリル文字。これはこれで問題なしかも。キリル文字のキーボードを用意すれば、一方向に入力したものが入力されていくだけですから。
でも、入力が難しい文字でコンピュータが生まれていたらどうなっていたでしょう。アラビア文字など、上下にも入力するものがある場合、入力は煩雑そうです。プログラムで入力するときの効率が悪いので、コンピュータの発展にも影響していたことでしょう。
日本は、コンピュータの発展に大きく関わってきました。しかし、日本語の入力は複雑。幸いなことにコンピュータが普及する以前から比較的英語に親しんでいて、初期の頃は英語で入力したり、ローマ字という方法がありました。その後、かな漢字変換が生まれ、スマホ時代になってフリック入力まで登場。けれども、どんなに便利になっても、画面で同音異義語などを確認しなければならないのは避けられないです。
戦後に漢字の使用を制限するため、当用漢字(当面使用することができる漢字)として、漢字を制限し、将来的に漢字の使用をやめる計画があったそうです。1981年に常用漢字とし、漢字撤廃を断念しました。日本語変換が登場するのが1983年です。初期の日本語変換は、快適とはいえず、「漢字をやめてローマ字にでもすればいいのに」という声がありました。時期が違えば、コンピュータの登場で漢字撤廃を後押ししていたかもしれません。
ハングルは規則性があるので、日本語に比べるとコンピュータへの対応は楽だったのではないでしょうか。子音と母音の組み合わせを全部フォントにして、変換するという意味では、ラテン文字ほどではないですが、コンピュータの普及する前に漢字撤廃をしたのは幸いなことです。
中国のコンピュータの普及も遅い方ですが、ピンイン入力が確立したあとだったので、普及の妨げにはならなかったようです。南アジアの国では、未だに正確に入力変換できない文字があるのだそうです。
言語で使用する文字は、宗教や政治との歴史そのものですが、コンピュータの時代になって、入力のしやすさも関係するようになりました。モンゴル文字からキリル文字、アラビア文字からラテン文字などと、コンピュータでの入力が簡単になった例もあります。逆にタイでは、入力が煩雑なので、あまり文字を入力したがらない文化となり、音声入力や写真が好まれる傾向になったといいます。
アメリカ発祥だから英語、と単純に考えてしまいますが、入力の容易さが重なったのは奇跡ではないかと感じます。と同時に言語が使用する文字によって、今後もその国のコンピュータの普及に影響していくこと、さらにそのために使用する文字を替えてしまう国もあるのだろうと思います。